知らなかった! 食生活の謎

なかなか面白い記事があったので、メタボ系研究室に籍を置くものとして補足エントリを書く。題名はホッテントリメーカーから持ってきたもので特に意味は無い。けど、知ってて損は無い知識だと思う。補足する記事は「もしかしたらあなたの人生を変えるかもしれない、やる気、集中力、簡単養成講座」disってるわけじゃないからね><
では、補足スタート。

脳は糖分で動いている。

うん、そのとおり。心臓から送られる血液は、BBB(blood-brain barrier;血液脳関門)というバリアを通過して初めて脳に入ります。血液中に流れる不純物が、人体の中で最も大事な器官といっても過言ではない脳にドバドバ入っちゃうと脳が壊れちゃいますよね。だから脳の前には厳しい「関所」が存在するのです。で、そこを通過できる栄養素はブドウ糖グルコース)だけ、ということ。*1

次に

ブドウ糖は貯めておけない

これも正しい。正確に言うと「貯めておけない」じゃなくて「ブドウ糖の形で貯めるのは効率が悪いから、あえて貯めない」ですけど。人間を初めとする生物は何万年もの間、絶対的に食物の少ない環境で生き延びて進化してきたため、できるだけ栄養素を体に溜め込もうとします。*2
小腸から吸収された糖分や脂肪分は全て最初は肝臓に送られます。糖分(デンプンなど)とはグルコースのような単糖が数多く連なったものですが、吸収される頃には分解され単糖か二糖*3となっています。しかし、このままでは蓄積しにくいので、単糖を再び繋ぎ合わせてグリコーゲンとして肝臓に蓄積します。
しかし、上で述べたようにグリコーゲンで蓄積するのは効率が悪いのです。グリコーゲンよりも効率がいい蓄積物、それがにっくき「脂肪」なのです。どれぐらい効率がいいかというと、グルコース一分子からはエネルギーの素であるATPが32個しか出来ないことに対して、なんと脂肪酸一分子*4からは106個も出来るのです。圧倒的すぎるww*5
よって肝臓では、とりあえず分のグリコーゲンを合成すると残りの糖分は全て脂肪酸に作り変えるのです。そしてその脂肪酸は血液で体中にある脂肪細胞に運ばれて・・・三段腹が完成するというわけです。

ここまではすんなり。で、補足したい点はここ!

ブドウ糖が切れると脳は栄養を失い、死滅していきます。
そうならないために、脂肪より先に筋肉を糖へまず分解、
内臓へも悪影響がでてくるそうです。
これは体の機能を犠牲にしてまで、脳が緊急事態だということ。

賢明な方なら「ん??」と思ったのではないでしょうか。「効率のいいエネルギー源である『脂肪』をこのお腹に蓄えてるのに、どうしてこれを分解して頭に運んであげないのよ!!」と。上二つの説明を素直に理解するとそう思って当然でしょう。
しかし、そこが人体のフシギ、そうはならないのです。糖→ピルビン酸→アセチルCoA→ATP、また、脂肪→アセチルCoA→ATPは可能なのに、「アセチルCoA→ピルビン酸」は不可能なため、「脂肪→糖」は不可能なのです。でも脳では糖しか受け取らない・・。どうしよ・・。という最終手段として人体は「筋肉」を自食してアミノ酸を取り出し、それを原料としてグルコースを作り出すのです。つまりこういうこと。

あまりにも分かりにくいですねwでも科学とはそういうものです(違
つまり脳以外で起こりうる「エネルギーの不足」なら「脂肪の燃焼」で対応できるのですが、「糖の不足」には「筋肉の分解」しか方法がないのです。なんだか理不尽ですね・・。

ここからは妄想だけど、人間以外の生物はそんなに脳で栄養を消費しないのかもしれない。普段摂取する糖で足りる分ぐらいしか脳を使用しない。人間は体長に比べて脳があまりに大きい。その分、使用するエネルギーも莫大なものとなる。脳の容量及び神経系の進化に代謝系が追いついていない、という解釈はできないだろうか。
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しかし、少しこの書き方には作為を感じますね。グリコーゲンはいくら「とりあえず分」といえども、一日分ぐらいは溜め込んでいます。つまり脳にとって、1日絶食するぐらいなら平気です。それを、「お腹が空いたら筋肉分解されるよ!」みたいな危機感を煽るような書き方で、すこしどうかな、と思います。確かに「嘘はついてない」けど・・。
後、やっぱりテレビはインパクトが必要だから、実験も分かりやすいのを出すんですよね。
それぞれ6人のグループの比較実験でどれだけの統計的有意差を主張できるのかと小一時間(ry
まぁ、信じるものは救われる。集中力とかは、特にそういうものなんじゃないかな。

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*1:ちなみに飢餓状態でグルコースが本当に無くなると、最終手段としてケトン体が栄養素として脳に送られます。そんな人は口からケトン臭(甘酸っぱい匂い)がします。ダイエットし過ぎてほのかに甘い匂いを漂わせている人は栄養が本格的に足りてません。要注意ですよ!

*2:その証拠として、血糖値を上げるホルモンはグルカゴンをはじめとして数多く存在することに対して、血糖値を下げるホルモンはインスリンの唯一種類しかない。

*3:単糖が二つ連なったもの。麦芽糖とかスクロースとか。

*4:ここではパルミチン酸

*5:どれぐらい効率がいいかというと、普通の人間でも、カロリー的には二ヶ月間の絶食に耐えうる、肥満の人なら一年間は大丈夫ぐらい。(もちろん水分や必須ミネラルなどは補給したとして。)