博士ネットワーク・ミーティング@京都 オフレポ

一昨日id:sivadさんの働きかけによる「博士ネットワーク・ミーティング@京都」が開催された。
詳細はここ
簡単に説明すると「とりあえず日本の科学政策やばいよやばいよ。現状どうなってんの?そしてこの先どうすんの??」という会合。


13:30にパネルディスカッションスタート。
ファシリテーター:sivad氏(赤の女王とお茶をの中の人)
パネラー:NPO法人サイエンスコミュニケーション代表理事 榎木英介氏
     株式会社フューチャーラボラトリ代表取締役 橋本昌隆氏
     特定非営利活動法人KGC理事長 柴田有三氏
といったそうそうたる面々。
以下、心に残った事をつらつらと。

文科省ポスドク問題 by橋本さん

橋本さんは科学政策の面から今のポスドク問題について解説。官僚は「少子化による学生の減少→国は研究費、教育費をカット→官僚の天下り先の減少。」という流れを防ぐため、ポスドク100万人計画を立案。つまり建前は「日本を科学技術立国にするために、学力を持ったPhDを作ろう!そのためには莫大な予算が!」本音は「やばい、このままでは教育費がカットされて、俺の天下り先がなくなってしまう!」ということらしい。
この辺の事をふまえて、彼は今のポスドク問題の戦犯は「文科省の役人→現場の力の無い教授→何も考えてない学生自身」の順に重いと説く。そして今後の活動としては、文科省の改革が第一、その次にマネジメントできない教授を首にすべき。というかバイオサイエンス系の研究室は7割ぐらい廃止してもいいんじゃないかなw、そして、上記の様な情報(ポスドクやばい、研究だけが人生だけじゃないetc..)に大学の若い頃からアクセスできるようなシステム作り、を目指している。

大学教授の在り方 by橋本さん

「今の大学教授にはマネジメント能力が不足している。」という彼の言動を聞き、勢い勇んで質問してみた。

「今現在の現場の大学教授は「学問のプロ」としてそのポストを獲得している。若い頃から研究一筋、論文の質と量でアカデミックという厳しい世界を渡り歩いてきた猛者達である。そのため、あくまで「学問のプロ」であり「教育のプロ」「お金集めのプロ」ではない。なのに、毎日の時間のほとんどを科研費などの申請と学生への教育に取られている。「学問のプロ」であるべき研究室の長が、ポストがあがるごとに研究出来なくなる現状というのはどこかいびつであるのじゃないか。研究一筋の彼らに、その3つの条件が揃わないだけで怠慢というのは酷すぎるのではないか。というわけで、大学教授のシステムを「学問のプロ」「教育のプロ」「政治のプロ」と細分化して、それぞれの専門の人が担当したほうが大学はうまいこと回るんじゃないだろうか。」

橋本さんは概ね賛成してくれたし、大学法人化によってシステム的にも可能であるようなこともおっしゃっていた。が、ここで時間オーバー。残念。もう少し、深い話を伺いたかった。
その後の自由時間に、ある助教の方から「細分化した場合、お金集める人がやっぱり力持つのよねー。一昔前の大学は事務がすごい力持ってて、教授が事務に頭下げてお金もらってたのよ。」という話を伺った。理想を語るのは簡単だが、実現にこじつけるには様々な障壁を超える必要がある。

世界中の不思議を解明する by柴田さん

柴田さんは独特な世界観を持っている。コンセプトは「世界中の不思議を解明する。」歴史上でそれを実際体現しようとしていたのは「釈迦」。現在はネットというツールを使えるため、物理的な距離の制約はなくなった。釈迦よりも実現に近いところにいる、らしい(本人談)

場の提供 by柴田さん

もう一つのコンセプトは「場の提供。」目標はルネサンス期におけるパトロンロレンツォ・デ・メディチパトロンといっても、財力が必要なわけではない。志高い人、常識にとらわれない人を巡り合わせ、場を提供する。志はあるがくすぶっている人に適切な場を提供し、波長の合う人を紹介する。自分が学問のプロになる必要は無い。ただし人を見る目が重要。平凡な材料から魔法の秘薬を合成する錬金術師のような役割といったところか。

資金繰りの極意 by柴田さん

お金の集め方も独特。お金がないところからわざわざ集めようとする必要はないし、正当法だとライバルも多い。お金が余っているところにいって壮大なビジョンを語ってケムにまけばいい。むしろ自分が語る必要すらない。ビジョンを持っている人を捕まえてビジョンを語らせればいい。日本にはうん兆円というタンス預金があるし、世界に目を向ければ不景気知らずの中東の国がごろごろ存在している。なによりもまず行動。「狭い研究室に閉じこもって頭悩ますぐらいなら有閑マダムを口説くべし。」

ネットワークとコミュニティ by柴田さん

ネットワークは名刺交換とかで形成する事が出来るただのつながり。コミュニティはもっと深いもの。ゴールを共有して、共にそこへ向かう同志のようなもの。だから会合はオープンにやるものではない、気の置けない人達とクローズドに行うべき。
その後、二人で少々話した。「今日の話題がお金の方に進んでたからああいうドバイの話とかしたけれどもホントはそうじゃない。お金の話よりもまずはその人との関係作りが先。ビジョンを共有してから初めてお金の話になる。その人の持つ哲学に惚れるかどうか、そこがないと関係は先に進まない。」機会があれば近々KCG覗いてみよう。2時間と短かったのが何よりも残念。彼らの話をもっと聞き、ディスカッションしたかった。

常識、なにそれ、食べれるの? by柴田さん

常識の枠にとらわれないことが大きなプロジェクトを行う最大の秘訣。今も気功の科学的解明に向けた研究会を開催しているらしい。何事も違う視点から見る事が大切。本人もおっしゃっていたが、彼は根っからの懐疑主義者。人の言う事なんて信用しないし、自分の言ってる事も半分ぐらいは信用していないw そういう観点で社会を見ると違った物事が見えてくるに違いない。考え方がPCR開発者のキャリーマリスに近いと感じた。既存の枠にはまっていない。むしろ自分に合ったフレームワークを創造する側の人間。新興宗教開けば成功しそうだな。

榎木さん

榎木さんは上記の二人の話に呑まれて、あまりお話しする時間がなかった。残念。
サイエンスコミュニケーションをメインの活動にNPOを運営されており、ノウハウや苦労話、彼自身の視点をぜひとも聞いてみたかった。

小さな大学という活動 by前さん

小さな大学の代表の前さんともお話。大学の方針として、専門が物理、対象が大学生、という違いはあるが、リバネスの方針とかぶるところは結構あった。リバネスはバイオサイエンス系のノウハウは溜まってきているが、物理系の科学教室はほとんどない。提携できるところは提携していきたいと感じた。

今後にむけての抱負

その他、幻影随想の中の人や、各大学の助教、准教授などそうそうたる面々ではあったが、この会だけで終わるとただの自己満足になってしまう。今後も持続的に連絡を取り、建設的な議論を重ねていく必要がある。メーリスやSNSをツールとして密に情報の交換を行っていくつもり。